思わぬことでした。
温かい牛乳を飲みたくて、小鍋をコンロにかけ、
別のことをやりはじめて、そちらへのめり込み、
はっと気付いてコンロを見ると…
鍋の上を覆うように白い幕。
あわてて火を消し、中を見れば、
底の方に少しだけ、白いものが。
ふきこぼれ、音が立ち惨事を知るのは、いつものパターン。
なのに、静かに静かに牛乳は煮詰まっていったようでした。
コンロの受け皿にもこぼれていたものの、焦げ付くでもなく、
鍋の内底のきつね色も、何やらご愛嬌ほどのやわらかさ。
煮詰まった牛乳は甘みを増し、食感は湯葉のよう。
たんぱく質が固まらないうちにとコンロを拭くと、
甘いミルクの香りが部屋に漂って、幸せな気分になりました。
鍋はしばらく水に浸け、ゴシゴシこすっていくと、意外と簡単にきれいになりました。
日々、味噌汁やスープを作るのに大活躍の小鍋くん。
こすっている時に、そこに思いが至り、感謝が沸いてきました。
作ろうと思っても、作れるものではない、
やろうと思っても、できることではない、
そんな、素敵で不思議なひとときでした。