少し雲広がる。猛暑日から解放された様子。
冷房で締切の場所より、風が流れる外が気持ちよい。
そうして歩いていて、ふと、線路越しに窓を見上げた。
その窓には、時折模造紙に大書きされたメッセージが貼られる。
高校球児、サッカー代表の頑張りや、母ちゃんからの若者へ、応援や労りのメッセージ。
時にはカラーで、時にはイラスト付きで。
私がこの町に来たときには、大抵何かしら書いてあり、通るのが楽しみだった。
そのうち、私の生活が変わってからはあまり通らなくなり、いつしか窓を見上げてもカーテンだけのことが増えた。
母ちゃんのメッセージはこれが最後と書かれていたのは、2ヶ月ほど前だったか。その後、メッセージは外され、カーテンが閉まっていて、今日。
"ありがとう"の文字がガラスに貼ってある。
1階の店のシャッターは閉められ、貼り紙が見える。
ああ、どこかに越されたのだろうか。
窓のメッセージをどうして始められたか伺いたいと思いながら、お礼を伝えたいと思いながら、少し足を伸ばすのを怠ったばかりに…。
私の親の世代が築いた個人経営の店は、無くなっていくばかり。
心のすき間に風が流れてゆく。