落ち着いた茜色のこぎん刺しに、工藤得子さんの系譜、とサブタイトルがひっそり記されています。
小冊子というより、しっかり厚みのある、手触りのあたたかい本。
こぎんの歴史を伝える年一回発行の雑誌です。
私の大先生にあたる工藤得子さんの軌跡。
こぎんの衣類を見に出かけ、模様を収集し、組合わせの方法を割り出し、伝える。
教師という職業に就いていた幸運はあっても、パソコンもコピーもない、方眼紙もおそらく高価だろう時代を思うと、眼と手で資料をつくるのは、並大抵ではありません。
本を一冊出版したのは、長年気を入れて取り組んだからこそ可能だったと思うのです。
写真が気軽に撮れる今では考えられませんが、昭和はそんな時代でした。
私の先生の航跡を作品の写真とともに改めて触れると、エピソードが一本の糸になって見えます。
大先生からの大きな流れとつながり、こぎんという布の大きな模様のひとつとしてあるのかもしれない、そんなイメージがわいてきます。
豆っこほどでも、私も布の片隅にありたい…
写真の美しさにはため息。
グラデーションの色の変化、刺し糸の質感、こんなに伝えることができるのかと。
他にもたくさんのこぎんの刺し手さんの話や様々な話題満載。
小さな本に、こんなにと思うほど、こぎんのあれこれが詰まっていて、楽しかった。
こぎんに片想いしはじめた頃、情報を得られなかったのとは隔世の感があります。
この本を作り上げた方々には頭が下がります。
こぎん好きは、見ていたい、刺していたい人ですもの。
伝えてくださり、ありがとうございます。