こぎん刺しと混同されることの多い、南部菱刺し。
横長のひし形模様は、ダイナミックで華やかな印象。
青森県でも太平洋側、昔の南部藩だった地域で伝えられているものです。
こぎん模様は奇数目
菱刺し模様は偶数目
といわれますが、こぎんにも偶数の模様(そろばん刺しなど)がありますし、近年は交流して採り入れられていることもあるかもしれません。
こぎんは、文献にあり、民芸として見出だされ、人々の目に触れやすいものです。上着に刺されていたので、晴れ着なら大切にされました。
それに対して、菱刺しは、タッツケ(ボトム)に刺され、農民の普段着ゆえに使って消え行くものであったのでしょう。
南部の農業は意外にも、こぎんの故郷津軽より厳しいとも聞きました。夏のヤマセで凶作、という言葉を思い出します。
鮮やかな色の毛糸で刺した前掛けは、明治に鉄道ができ、さまざまな物が運ばれるようになってからだそう。
華やかなイメージとは遠い歴史があるようです。
日常品が残されるのは、暮らしに余裕あってのこと。文献に残るのは、権力ある者に注目されてのこと。
そこからこぼれ落ち、時代にそぐわなくなったものは、人々に知られることはありません。
それでも受け継いできた人たちがいて、継ぐがいるから、今も菱刺しを見ることができるのですね。
菱刺しも大好き。
こぎんと別のものとして、気に入っています。
離れた地に生息していて縁が薄いのは残念だけど、エールを送ります。
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菱刺しもこぎんも、刺したものが全て。
最近はデザインで注目が集まるこぎんに対し、地に足をつけた営みで続いていることが、菱刺しの強み、と私は思います。