晴れ。吹く風の温度は穏やかでも、陰の冷えは格別。
草乃しずかさんの展示に、最終日に出かけることができた。
日本刺繍という繊細な針仕事。屏風や着物の大作には、費やされた時の量にも圧倒される心持ち。
古書の図案帳から作り出された数々の模様のパネルは、一つ一つが空白を生かした絵画にも思える。
正倉院の布や鳥獣戯画を模した作品など、動物や龍の顔立ちに、なにかみな育ちのよさを感じた。あえて辛苦を表さずにいるかもしれないけれど、ほわんとした鳥獣戯画はちょっと物足りない。
古い着物の再生はもとより、クッション、透ける薄布のカーテンや服など多彩な品々。この方のすごさは、日本刺繍の可能性を拓いているところ。
それは好きだからこそできたことなのだろう。
素晴らしかった。
思わず図録を買った。
実物が素敵なら開くことはなさそうといつもならスルーするけれど、図案帳は大好きで。まとめるセンスを見習いたくて。
グッズ売り場でお香の匂いもいただき、満ち足りた気持ちで会場を後にした。